キース・ヘリングが遺したバイブルの無いアートの教会。中村キース・ヘリング美術館

最終更新: 2月25日




キース・ヘリングが遺した作品の数々を北杜の森で観る。バイブルの無いアートの教会

キース・ヘリングの顔と名前を知らなくても、キース・ヘリング作品を知っている。そんな若者世代は多いだろう。ヘリングのアートは現在もスマートフォンケースやTシャツなどにデザインされ、ドッグやベイビーなどのアイコンはアートの領域を越えて親しまれている。今でこそ、アート作品がアパレルなどのグッズに落とし込まれることは珍しくなくなった。しかし、キース・ヘリングが活動した1980年代には革新的な試みだった。キース・ヘリングは美術業界からの批判を恐れることなく、自身の作品をさまざまな方法で拡散することで富裕層だけに独占されたアートを民衆へ開放した。


中村キース・ヘリング美術館は中村和男館長の300点以上のキース・ヘリングコレクションを収蔵する美術館。世界中の展覧会にも作品を貸し出すなど、日本だけでなく世界規模でキース・ヘリング作品とキース・ヘリングの功績を発信し続けている。


建築家・北川原温氏が手がけた森に浮かぶ雲のような、洗練されたモダン建築も美術館のハイライトのひとつ。展示室はキース・ヘリング作品の系譜を辿るように「闇から希望へ」をコンセプトに作られている。暗闇に絨毯が敷かれた、足音すらなくなる部屋から、小淵沢の朝日の照度に合わせた光に満ちた空間へと誘われる。2015年には増築を経て「闇から希望へ」そして「自由」へと拡張されている。



キース・へリングと大山エンリコイサムのアートが交わる展覧会「VIRAL(ヴァイラル)」

2019年のコレクション展のテーマは“ヒューマニズム”。愛に溢れたキース・ヘリングの人間性、その光と影に迫るエキシビションが開催されている。人々が抱える狂気、相反する愛と平和。晩年、エイズを発症しながらも、作品を作り続け、人種、宗教、セクシャリティを超越し、“自由と平等”のメッセージを残したキース・ヘリングの人間性が大きく反映された作品が見られる展示となっている。


現在、NYを拠点とするアーティスト、大山エンリコイサムの展覧会が同時開催中。大山はスプレー塗料を用いて描かれるライティング(グラフィティ)に独自の解釈を加えた作風で知られている。駆け抜けた時代は違えど、ニューヨークやストリートアート、そしてダンスのように動きのあるドローイングと、キース・ヘリングと大山エンリコイサムの両者の共通点は多い。



展覧会タイトルとして付けられた「VIRAL(ヴァイラル)」は、直訳すると「ウイルス性の」という意味だが、SNSが普及した現在のインターネット上では「拡散」の意味を持ちポジティブな言葉としても親しまれる。



「VIRAL」は大山が手がけてきた作品や、キース・ヘリングが1983年に東京を訪れ壁画を制作した記録写真のコラージュの上に、大山による長さ15メートルもの巨大な壁画作品を展示するなど、見所の多いエキシビションとなっている。




Altarpiece: The Life of Christ, 1990


2019年の展覧会の目玉『オルターピース:キリストの生涯』は亡くなる2週間前に完成された作品。自由で躍動感のあるドローイングがヘリング作品の特徴であるが、幼少期は厳格なキリスト教徒の家庭に育ったヘリング。死を目前に家族への愛に回帰したのだろうか。ヘリングの作品性とバックグラウンドが融合した作品のように映る。



ヘリング自身がデザインしたグッズを販売する「POP SHOP」は1986年にニューヨークでスタート。その翌年、世界で唯一の二号店が東京にオープンした。ミュージアムショップでは、そのPOPSHOPを再現し、日本ではここでしか手に入らない世界中から集めたアイテムを取り揃えている。



大山エンリコイサム個展「VIRAL」

会期 2019年5月18日~11月17日






プロフィール

アーティスト。エアロゾル・ライティングのヴィジュアルを再解釈したモチーフ「クイックターン・ストラクチャー」をベースに壁画やペインティングを発表し、現代美術の領域で注目を集める。1983年、イタリア人の父と日本人の母のもと東京に生まれ、同地で育つ。2012年よりニューヨークを拠点に世界各地で個展を行なうほか、著書『アゲインスト・リテラシー─グラフィティ文化論』の刊行、雑誌『美術手帖』エアロゾル・ライティング特集の企画・監修、コム デ ギャルソンやシュウ ウエムラとコラボレーションするなど、多角的に活動する。

http://www.enricoisamuoyama.net


Artwork ©Enrico Isamu Ōyama

Photo ©Shu Nakagawa



中村キース・ヘリング美術舘

北杜市小淵沢町10249-7

TEL:0551ー36ー8712

入館料:一般/1200円 障がい者/600円 16歳以上の学生/600円 15歳以下の小人/無料

開館時間:9:00~17:00

休館日:なし

URL:http://www.nakamura-haring.com/


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